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蒸留酒の来た道 世界史小ネタ第91回

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「森伊蔵」のニセモノがネット上で出回ったり、空瓶まで売買されるなど、ちょっと異常なくらいの焼酎ブームですね。よく知られているように、蒸留酒とはワインやビール、清酒などの醸造酒を加熱し、沸点の差を利用してエチルアルコールを分離したもの。薩摩焼酎の人気の秘密は風味を損なわずに濃度を高めている点にあるとか。その技術はどこから伝わってきたのでしょうか。

異論はあるものの、沖縄の蒸留酒「泡盛」との関連は見逃せません。14世紀から16世紀にかけて、琉球王国は東シナ海の一大交易センターとして栄えました。絹、陶磁器、刀、象牙を満載した大型船が那覇と福建省、東南アジアを盛んに行き来したとか。名酒「泡盛」が生まれたのもこのころ。蒸留技術は当然交流のあった薩摩にも伝わったことでしょう。初期の薩摩焼酎の原料は米や雑穀など。安価なサツマイモを使い出すのはずっと後の18世紀以降ですが、この芋もまた琉球経由で入ってきました。

では泡盛はどこから来たのか。その原料は米ですが、日本産の米ではなくタイのインディカ米であることはあまり知られてないようです。タイでは蒸留酒「ラオ・ロン」が有名で、これが泡盛の原型ではないかと考えられてきました。ただ、中国には「白酒」(パイチュウ)という蒸留酒が古くから存在し、マレー半島をはじめ東南アジアの島嶼部でも様々な蒸留酒が作られていました。泡盛はアジア一帯に広がる蒸留技術の終着点と考えたほうがよいのかもしれません。

これらの蒸留酒をさらに遡ればどこに行き着くのでしょうか。その原点は中世イスラムの「錬金術」にありました。錬金術とは他の金属から金を作り出そうという試み。古代地中海沿岸で生まれ、紀元300年ごろのアレクサンドリアではガラス製の蒸留装置が使われていました。これをそっくり引き継いだのがアラビア人たちでした。

10世紀ごろ彼らは盛んに「花」を蒸留して「香水」をつくっていました。同じ蒸留器で作られたのが「アルコール」(al-kuhl)。アラビア語で「al」は冠詞で「kuhl」は粉末と言う意味。酒をタブーとするイスラム教徒がアルコールを作り出したという点が面白いですが、彼らは一種の薬品として使用していたようです。

十字軍遠征で蒸留技術はヨーロッパに伝播し、ワインから「ブランデー」が生まれました。ペストが猛威を振るった14世紀には特効薬として知られるように。17世紀に入ると「コニャック」が名声を獲得し、一躍高級ブランドになりました。

一方、中世のアイルランドでは「エール」(大麦ビール)から「ウイスキー」が生まれました。ケルト語で「ウシュクバー」(生命の水)の意味。やがて水とビートに恵まれたスコットランドが一大産地になり、「スコッチ・ウィスキー」が誕生しました。

13世紀以降東南アジアに蒸留技術を伝えたのはアラビア商人たちでした。彼らは蒸留酒を「汗」にたとえて「アラク」と呼びましたが、それはペルシャや東南アジアの蒸留酒「アラック」の名になりました。中国の文献では「阿刺古」「阿刺吉」などと表現され、江戸時代の日本でも「阿剌吉酒」「荒木酒」(あらきしゅ)と言えば、焼酎のことを指したとか。

アラビア語で「アランビック」と呼ばれた蒸留器は、中国や日本に伝わり「らんびき」(蘭引)と名づけられました。フランスでは今もブランデーの蒸留器を「alambic」と呼んでいるとか。やはりルーツは一つだったようです。          

参考にしました

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リンク

http://www.yanagita.co.jp/paper日本食糧新聞社連載の「焼酎のまめ知識」から

http://www.kt.rim.or.jp/~wadada/cyokayume/
「ひるね蔵酒亭」。ここの「酒と火の出会い」資料準備室に、各種蒸留器の写真があります。

http://www.bretagnenet.com/distille
フランスのアランビック博物館。結構大型です。

http://www.phyton-cide.org/index.html
森林の不思議 『フィトンチッド』。この中の「フィトンチッド資料室」の「フィトンチッド基礎講座 (5)」に「蘭引」の紹介があります。

http://www.cognac-world.com/sommaire.php3
「cognac world」

http://www.scotchwhisky.net/
「scotch whisky net」。