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母をたずねて三千里 世界史小ネタ第86回

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『母をたずねて三千里』で、13歳のマルコ少年は27日間の船旅の末、単身ブエノスアイレスにたどり着きました。でもなぜイタリアからアルゼンチンなんでしょう。二つの国を結びつけるものとは。

原作者デ・アミーチスは19世紀後半のイタリア人。統一戦争(リソルジメント)では自ら武器を取ってハプスブルク家と戦いました。祖国の未来は若者たちの肩にかかっている。アミーチスは「どこまでも純粋でひたむき」なマルコ少年に、その理想像を求めたのかもしれません。

もともと経済基盤の弱いイタリアは、統一後も不況に揺れていました。一方冷凍船の発明によって、アルゼンチンは欧州向け食肉の格好の供給地に。外国資本が投入され、パンパ(大草原)と港を結ぶ鉄道建設が始まりました。イタリアやスペインから大量の移民が押し寄せ、人口は40年あまりで4倍に。マルコの母親がブエノスアイレスに「出稼ぎ」に行ったのもうなずけますね。

「良い(ブエノス)空気(アイレス airs)」という意味のブエノスアイレスは、ラ・プラタ河に面した南米有数の都市。中でもボカ地区は移民たちが最初に上陸した港町。カラフルにペインティングされた壁や屋根が当時の雰囲気を伝えています。民族、文化の坩堝のようなこの一角で、ちょっと下品なダンスが産声を上げました。そうタンゴです。

タンゴは最初、船乗り相手の娼館や飲み屋で細々と踊られていました。しかし20世紀に入ると、専門のタンゴ楽団が生まれ、「バンドネオン」が演奏の中心に。これは鍵盤のないアコーディオンのような楽器ですが、切れのいいリズムを刻み、タンゴの魅力を数倍に引き上げました。『情熱大陸』の冒頭で、澄んだ音色を披露しているあれですね。

第一次世界大戦のさなか、アルゼンチンは未曾有の経済発展をとげました。一人当たりのGDPはフランスと肩を並べ、地下鉄が開通し、スカラ座、オペラ座と並ぶ三大オペラハウスの一つ「コロン劇場」が完成。ブエノスアイレスはまさに「南米のパリ」に。名曲「ラ・クンパルシータ」が生まれたのもこのころでした。

1930年ラ・プラタ河の対岸の国ウルグアイは、参加チームの渡航費を全額負担するという条件で、栄誉ある第1回W杯の開催地に。食肉業や羊毛業がもたらした富がいかに大きかったかわかりますね。この大会でアルゼンチンはウルグアイと決勝を戦い、南米のサッカーのレベルの高さと豊かな経済力を世界にアピールしました。

しかし第二次大戦後、工業化の波に乗り遅れたアルゼンチンは慢性的な不況に。政変が相次ぎ、サッカースタジアムが血の粛清の舞台になったことも。あのマラドーナもプレーした「ボカ・ジュニオルズ」はタンゴ発祥の地「ボカ」が生んだ超名門クラブ。しかし低迷する経済には勝てず、今では一流選手の多くをヨーロッパのビッグクラブに送り出す側に回っています。アルゼンチンからイタリアへと「出稼ぎ」の流れは完全に逆になってしまいました。

参考にしました

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リンク

Http://www.riccati.it/verismo/deamicis.htm
デ・アミーチスの略歴。イタリア語ですが、「altavista」などで英語に訳すとなんとなくわかります。

Http://www.regione.piemonte.it/
リソルジメント時代のイタリアの歴史。イタリア語。

Http://www.geocities.co.jp/
現代アルゼンチン情報。日本語。

Http://www10.u-page.so-net.ne.jp/jb3/
田邉義博氏のタンゴのサイト。バンドネオンの写真もここで見ることができます。

Http://www.todotango.com/
ここの「The selection」のコーナーで、タンゴの名曲が「リアルオーディオ」などで聞けます。また古いラジオ放送の記録なども。

Http://www.esto.es/tango/english/default.htm
MIDIでタンゴの名曲が聞けます。タンゴの歴史やブエノスアイレスの古い写真なども必見。

Http://www.doujinsha.com/post30.htm
脇田泰子「世界サッカー物語」から。「ボカ・ジュニオルズ」と「リバープレート」の違いなどに言及していてとても面白く読ませてもらいました。