目で見る世界史 TOP 






サーカスと雑技 世界史小ネタ第76回

関連する小ネタ
1
2
3
4

関連するリンク
1
2

若者たちが棒上で乱舞し、椅子やグラスを積み重ねる。どこにでもある素材を使いながら、しかし極限まで鍛えられた技と肉体を見せつける中国雑技。西洋の「サーカス」とは異なるルーツをもつ「雑技」の歴史とは。

サーカスの語源はローマ時代の円形競技場「circus」(キルクス)に。その元はcirculus(円、仲間)で、それが英語のcircleやcircuitに。ここでローマ市民の慰め物として演じられたのが、グラディエイターの闘いであり、戦車レースでした。

中世に入ると競技場の熱狂は忘れ去られ、旅芸人が遍歴しながら動物芸や軽業を見せて回る時代に。これをサーカスとして復活させたのが、イギリスのフィリップ=アストレー(1742-1814)でした。彼は騎馬隊将校で乗馬の名手。ロンドン郊外に見世物小屋を建て、馬の曲乗りを演じるとこれが大ヒット。中央の円形舞台で馬が疾駆し、道化師が次の出し物までの間を繋ぐという近代サーカスの原型が誕生しました。

サーカスは新大陸アメリカで黄金期を迎えますが、その立て役者はP.T.バーナム(1810~91)。彼はテントで各地を回りながら、シャム双生児や小人を使ったショーで客を集めました。そう言えば「リングリング」はサーカスの代名詞ですが、その正式名称「リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス」に彼の名が残っていますね。

一方、中国の「雑技」にも三千年以上の歴史が。元々は物を遠くに投げたり、縄を渡ったりなど日々の生活や労働から生まれたもの。熟練した技は人々の驚嘆を誘い、やがて人前で演じられるように。

文献によると春秋戦国時代にはすでにプロらしき人々が生まれていたようです。諸王はこの時代広く人材を集め、富国強兵を競いましたが、投擲や綱渡りに秀でた者たちにもチャンスが与えられました。彼らは主人に身を寄せてその腕を鍛え、時には戦場でその技を生かしつつ、今日の雑技の基礎を築きました。

漢の時代には竿を頭に乗せる技(頂竿[ちょうかん])が生まれましたが、これは今でも雑技団の主要演目の一つ。北朝時代には奔走する馬の背や腹を自在に移る技が普及しましたが、それは遊牧民が伝えたもの。唐代に入ると西域や天竺の技がシルクロードを経て伝えられいっそう国際色豊かに。雑技はほぼ完成の域に達し、その一部は日本にも伝えられ、猿楽などと呼ばれました。

明清時代になると雑技は宮廷の保護を離れ、市中の見世物として発展しました。芸人たちの一部は重い税を逃れて流浪の旅に出ました。中には進んで農民一揆に身を投じる者も。白蓮教や義和団の幹部には雑技芸人の名前が散見されたと言いますから、その影響力は小さくなかったと思われます。

河北省呉橋は雑技界のリーダーを多数輩出してきた有名な村。村人たちは農閑期になると芸を売り歩く旅に出て、春の種まきの頃にはまた舞い戻るという生活を千年以上にわたって続けてきました。親から子へと受け継がれた厳しい心身の鍛錬と村を挙げて取り組まれた芸の開発。「雑技」の素朴な味わいの秘密はこの辺にあるのではないでしょうか。

参考にしました

中国芸能史―雑技の誕生から今日まで
傅 起鳳 傅 騰竜

三一書房
1993-05
売り上げランキング 


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


サーカスが来た!―アメリカ大衆文化覚書
亀井 俊介

岩波書店
1992-02
売り上げランキング 209,251


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

リンク

Http://plaza4.mbn.or.jp/~chansuke/index.html#CIRCUS
安部 保範氏による「見世物広場」。中国雑技を始めジャグリングやサーカスを紹介した貴重なサイト。

Http://www.circusweb.com/circuswebFrames.html
サーカスの歴史はこのサイトから。

Http://www.hannefordfamilycircus.com/hist
Hanneford Family Circus のサイトのなかの初期のサーカスの歴史。

Http://www.hatii.arts.gla.ac.uk/Multimedi
フィリップ=アストレーのサーカス。リングの様子がよくわかります。

Http://www.culture.sh.cn/scipage98/yu
上海雑技団の公式サイト。中身は薄いですが。

Http://www.acrobatsofchina.com/main.html
この中の「The History of Chinese Acrobatics 」が、中国雑技に本格的に触れた数少ないページ。

Http://www.asahi-net.or.jp/~mj9h-iwt/
岩田氏のサイト。ここの「中国旅行の部屋」のなかの「中国・河北の民間芸術を訪ねて 」に、呉橋の記事が出ています。