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ロスチャイルド家の200年 世界史小ネタ第73回

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20世紀のノーベル賞受賞者の20%、世界の億万長者400人(1999年)の15%がユダヤ人だそうです。なぜ彼らは20世紀の成功者となりえたのか。ロスチャイルド家を例に考えてみましょう。

マイヤー・アムシェル・ロートシルトは1744年にフランクフルトのゲットーで生まれました。ゲットーは旧市街の外縁の幅300メートルほどの一角。常に人口過密な上、薄暗く非衛生的でしたが、ユダヤ人にとって安全な場所であったことも事実。外に出るときは決まった服装を義務づけられ、年間の結婚件数も12組と厳しく規制されていました。

たとえキリスト教に改宗したとしても、この屈辱と差別から逃れることはできませんでした。改宗ユダヤ人として、結局はドイツ人にもなりきれず、生涯ドイツへの愛と憎しみに引き裂かれたハイネのように。しかしアムシェルのように商才に恵まれた青年たちは、逆にこの環境の中で、ナショナリズムに縛られない国際ビジネスマンとしての感性を磨いたようです。

アムシェルは「赤い盾」(Rothschild)を家号とする小さな古銭商でしたが、やがてヘッセン伯ウィルヘルム9世の蓄財を手伝い「宮廷ユダヤ人」に。しかし本当のチャンスはフランス革命とナポレオン戦争後にやってきました。彼は5人の息子たちをウィーンやパリに派遣していましたが、亡命を余儀なくされたヘッセン伯の資金を委託されると、これを元手に果敢な投資活動を繰り広げます。

特にロンドンの三男ネイサンは大陸封鎖令で底をついた砂糖、コーヒー、綿織物などのイギリス製品を大陸に密輸して大儲け。ナポレオン軍を煙に巻いてポルトガルで反撃の機会をねらうウェリントン将軍に80万ポンドもの金塊を輸送して名を挙げました。「町のあちこちで通りが血に染まっているときこそ、買いの絶好のチャンスだ」とはネイサンの言葉。

彼の神話はワーテルローの戦いでも発揮されました。復活したナポレオン軍とイギリス軍が1815年ワーテルローで激突すると、予断を許さない情勢に。しかし独自の情報ルートでいち早く戦争の結末を見抜いたネイサンは「ナポレオン勝利」のガセネタを流し、暴落した英国公債を安く買いたたいて天文学的な資産を手に入れたとか。

ウィーンの次男ソロモンはメッテルニヒに大金を貸して貴族に列せられ、五男ジェームズはフランスの「鉄道王」に。ネイサンの跡を継いだライオネルは伝統の英国議会に迎えられた最初のユダヤ人。そのせいか彼は、1875年にスエズ運河の株が売りに出されると、国会審議が間に合わない政府に代わってこれを400万ポンドで買い上げ英国を助けました。

ロスチャイルドにとって戦争は最大のビジネスチャンス。戦時公債の起債を引き受けては、手数料と値上がり幅で儲けました。クリミア戦争での英国債や日露戦争での日本債がいい例ですね。19世紀末になり、投機に頼るビジネスに限界が見えると、エネルギーや資源関連の産業に手を広げていきました。

1883年バクー油田を手に入れたのはジェームズの息子アルフォンソ。先に進出していたアルフレッド・ノーベルと手を組み、ロイヤルダッチとシェルを合併させ、ロックフェラーに対抗しました。ダイヤの「デビアス」や金の「アングロ・アメリカン」も元はロスチャイルドの資金。広瀬隆氏によれば、ユニリーバもリプトンもロスチャイルド系といいますから驚きですね。

今もなおロスチャイルド家は莫大な資産と華麗な閨閥で、世界の金融・経済に大きな影響力を持っています。フランクフルトのゲットーの片隅で、魂を引き裂かれながら、貨幣の行方だけをじっと見つめ続けたアムシェルの視線はその深い信仰とともにしっかりと受け継がれているようです。

参考にしました

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赤い楯―ロスチャイルドの謎 (1)
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リンク

Http://www.okada.de/unchiku/rothschild/rothschild.htm
Masaki OKADAさんの「フランクフルト便り」から。ゲットーの様子やロスチャイルド家の故地がよくわかります。

Http://www.dokidoki.ne.jp/home2/akira16/inde
『世界史なんか怖くない』から。ロスチャイルドの詳しい歴史を日本語で読めます。

Http://www.juedischesmuseum.de/
旧ロスチャイルド家を利用したユダヤ人博物館。ドイツ語(一部英語)なのでよくわかりませんが、丁寧に見ていくと、かつてのゲットーの地図などがあります。

Http://www.nmrothschild.com/
ロンドンのロスチャイルド商会(N M Rothschild & Sons Limited )のホームページ。5本の矢の紋章が印象的です。簡単ですがロスチャイルドの歴史が記されています。

Http://www.rothschildarchive.org/ta/
ロスチャイルド家の資料室。ジェームズのイディッシュ語の手紙など保存されています。