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フランドルの遺産 世界史小ネタ第71回

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フランドルはフィレンツェと並ぶ中世のハイテク産業地帯。毛織物と商業で栄え、北方ルネサンスの中心に。フランドルの遺産を受け継いだ国が世界の覇者になりました。

フランドルの名は9世紀中ごろに成立したフランドル伯領に由来しています。大部分は現在のベルギーの北半分に当たりますが、オランダやフランスの一部も含んでいました。英語圏では Flanders 。19世紀のイギリス人が書いた「フランダースの犬」はその中心地アントウェルペン(アントワープ)が舞台。しかし当のベルギーではこの話はほとんど知られておらず、アニメ化された日本から大量の観光客が押し掛けてようやく知られるようになったとか。

中世フランドルの繁栄は13世紀に絶頂期に達しました。中でも「北のベニス」と言われたブルージュは人口すでに20万以上を数え、定期市にはヨーロパ中の商人たちが集まったとか。ゲントとイープルは毛織物の町として栄え、5万人以上の職人たちで賑わっていました。「ここには私以外に数百人の王妃がいる」とはブルージュを訪問した当時のフランス王妃の言葉。

原毛はイングランドから輸入もの。これを高級毛織物やタペストリー、カーペットに仕上げ、ハンザ諸都市やアフリカ、オリエントに輸出。商人たちはギルドをつくり、自治権を獲得。現存する多くのギルドホールは当時の彼らのパワーをよく伝えていますね。イープルの猫祭りは三年に一度開かれる猫ファン垂涎の祭りですが、羊毛を食い荒らすネズミを退治してくれた猫への感謝をあらわしているとか。

14世紀になるとブルゴーニュ公国がフランドルを支配下に。「フィリップ善良公(ル・ボン)」の時代には、華やかな宮廷文化が花開き、ファン・アイク兄弟やブリューゲルのフランドル絵画が完成しました。善良王の孫娘マリアと結婚したのが、当時まだ片田舎の小領主にすぎなかったハプスブルク家のマクシミリアン1世。ハプスブルク家はこの結婚によってフランドルを手中に収め大飛躍への足がかりを掴みます。

マリアの遺児フィリップがスペインの王女と結婚してスペイン王室を継承すると、その間に生まれたのがカール。フランドル生まれの彼は1516年にスペイン王カルロス1世として、数年後には神聖ローマ皇帝カール5世として即位し、宿敵フランソワ1世(仏)や怪僧ルターと渡り合いますが、このときアントウェルペンが最も繁栄したとか。その子フェリペ2世は新大陸の大部分を独占し、「太陽の沈むことのない大帝国」を完成させますが、しかしフランドルの新教徒たちを弾圧することによって、「金の卵」を自ら潰してしまいます。

フランドルの遺産を食いつぶしたハプスブルク家に対して、イングランドは上手にその遺産を引き継いだと言えるでしょう。羊毛を輸出するばかりでは儲からないことに気づいたエドワード3世は、1326年外国人羊毛バイヤーたちの行動を厳しく制限。百年戦争直前には羊毛の輸出を厳禁。さらにはフランドルから大量の毛織物職人を招いて技術移植を試みます。彼は「羊毛商人王」などと呼ばれました。

この保護政策はチューダー朝にも引き継がれ、ヘンリー8世の時代には空前のウールブームに。ヘンリー8世の重臣であったトマス・モアが『ユートピア』で「羊が人間を食っている」と批判したのはこのころ。続くエリザベス1世の時代になると、フランドルに代わって最大の毛織物輸出国に。彼女がネーデルラントの独立を助けて、フェリペ2世の無敵艦隊をドーバー沖に沈めたとき、「大英帝国」への扉が開かれたと言ってもいいでしょう。

参考にしました

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読んでいて愉しい本です!!
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リンク

Http://www.newadvent.org/cathen/06094b.htm
フランドルの歴史の最も詳しい解説。ブルージュの人口20万人と言う数字などはここから。

Http://www.d1.dion.ne.jp/~norigen/euro/
「欧州雑感」。ベルギーの歴史に詳しい。日本語。

Http://www07.u-page.so-net.ne.jp/bg7/
セカンドクラスの添乗員、未来 (みく)さんの部屋。ベルギーの歴史やビール、レースなど特産も紹介してます。

Http://www.uk.so-net.com/~hirose/index.htm
この中に「フランダースの犬」に関する話題があります。

Http://www.asahi-net.or.jp/~eh6k-ymgs
ブルゴーニュ公国とフランドルの関係について詳しい。

Http://dspace.dial.pipex.com/town/pl
ここでは紹介できませんでしたが、英国の毛織物と言えば、コッツウォルズ地方。当時の毛織物の中心地バイブリーの村の写真などがあります。