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魔女の不思議 世界史小ネタ第60回

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13世紀から17世紀にかけてのヨーロッパで、数十万あるいは数百万の女性たち(一部は男性)が、無実の罪を着せられ、残虐な拷問のあげくに焼き殺されました。「魔女」という烙印を押されたばかりに。

下の「the killing of wiches」というサイトは、具体的な数字とできるかぎり実名を挙げて、魔女狩りの実態を明らかにしています。16,17世紀の最盛期を経て現代に至るまで、26万7092人が「魔女」として処刑されました。中には1431年ルーアンで火炙りにされた Joan d'arc (ジャンヌ=ダルク)の名前も。一番最近の記録は1999年の南アフリカ。公式の裁判記録だけでこれだけですから、実際の犠牲者は数倍に上ると見ていいでしょう。

初期の魔女(witch)の多くはイメージ通りの熟女ないし老女でしたが、ピーク時のドイツのある町では半分以上が男性というケースも。若い女性や子供たちも大勢混じっていました。どこかの段階で魔女狩りの性格が変質したことを伺わせますね。

きっかけは1487年二人のドミニコ会士が書いた『魔女の槌』という本。法皇インノケンティウス8世の推薦文が添えられ、各国に配布され、魔女裁判の教科書に。当時魔女を畏怖する感情は村人たちの間にくすぶっていましたが、カトリック教会が乗り出すことによって、組織的で大がかりな摘発に発展しました。マルティン=ルターも実は熱心な魔女ハンターだったと聞いてびっくりですね。

『魔女の槌』は「自白」重視でしたが、身に覚えがない被告に「自白」させる方法は「拷問」しかありません。下の「The Witching Hours 」というサイトでは、数々の拷問装置がこれでもかと言うくらい紹介されています。親指を締め上げる「Thumbscrews」に始まって、「The Judas Cradle」 という自分の体重で肛門に尖塔が食い込むようになった装置、あるいは車輪にしばりつける「The Wheel」、内側に無数の針がついた容器「The Iron Maiden of Nuremberg」など。(是非図を見てください)

一人が陥落すると、その口から数人の魔女候補の名前が引き出されるのは当然。普通の生活を送っていた女性が、いや男性が、いや幼児がある日突然魔女にされるわけです。こうして魔女は拡大再生産され、その犠牲者は雪だるま式に増え、1580年代のドイツではいくつかの村が絶滅しました。

果てしない狂気を生み出す魔女生成のメカニズム。でもどうしても残る疑問が一つ。いったい魔女とは何か。どうしてみんな魔女の実在を信じていたのでしょうか。これは次回に。

参考にしました

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リンク

Http://www.malaspina.com/burning/
「the killing of wiches」。犠牲者のデータ。

Http://shanmonster.lilsproutz.com/
「The Witching Hours 」。この中の「Punishment, Torture, and Ordeal 」を見れば、様々な拷問装置が図入りで紹介されています。

Http://www.rci.rutgers.edu/~jup/
魔女に関する概説。よく整理されています。

Http://www.zpr.uni-koeln.de/~nix/
ドイツの魔女狩り。多くの図版のコレクションが見応えあります。

Http://www.malleusmaleficarum.org/
「魔女の槌」のテキストです。

Http://etext.virginia.edu/salem/
ここでは取り上げていませんが、アメリカ、ボストンの「セーレム事件」を扱ったサイト。