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時間の誕生 世界史小ネタ第54回

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夜明けと日没、星の運行、季節の移り変わり。これらの自然現象に古代人は「時間」を感じたようです。でもそれが「時は金なり」という近代的な時間観念に成熟するまでには実に長い年月を要しました。

太陽は古代以来最も安定した時間の基準でした。日時計(sundial)はすでに紀元前3500年のエジプトで使われていたとか。以来砂時計、水時計あるいはろうそく時計などが工夫されましたが、それを使ったのは修道僧など限られた人々。14世紀のイタリアではじめて機械式時計が出現しますが、多くの市民の生活は太陽の運行に基づいていました。

「正確な時間」を最初に必要としたのは16世紀の航海者たちでした。緯度は天体の観測で簡単にわかったようですが、経度は船の速さと正確な所用時間からしか判断できなかったからです。チャールズ2世がグリニッジの王立公園に最初の王立天文台をつくったのが1675年。目的は海軍の航海を助けるための時間管理でした。王立グリニッジ天文台と協力しながら海軍のための正確な時間管理を発展させたのが、1830年設立のアメリカ海軍天文台。以来ここの原子時計は全世界に標準時間を供給し続けています。

時を刻む装置の開発は急務でした。振り子の発見者はガリレオでしたが、オランダ人ホイヘンスはこれを応用して1656年最初の振り子時計をつくりました。彼は改良を重ね、ついに1日の誤差が10秒以内というレベルに到達。イギリス人ジョン・ハリソンは1761年荒波にも耐える航海用の振り子時計(クロノメーター)を完成しました。

19世紀、時計製造の中心はスイスにうつりました。1685年ナントの勅令が廃止され、多くのユグノー(フランスのカルバン派)がジュネーブに逃げ込み、時計工業を活性化させたからです。以来ジュネーブを舞台に「正確さ」を追求する競争が激しく繰り広げられました。

同じ19世紀の中ごろ、イギリスで「時間」が社会問題に。それまでローカルタイム(各地域の南中を基準とする)を使っていたため、国内で最大30分ほどの時間差がありましたが、異議を唱える人はいませんでした。しかし1830年に世界最初の鉄道が営業を開始し、鉄道網が全国に拡大するとローカルタイムの不便さは顕著に。運転手は行き先ごとに時間を調整する必要が生じ、「時刻表」は不正確で、ダイヤは混乱し、接続ミスが頻発しました。

1846年の1月、ロンドンとマンチェスター、リバプールをむすぶ the North Western Railway が初めて両駅でロンドンタイム(グリニッジタイム)を採用。他の鉄道各社がこれに倣い、電信会社、郵便会社も後に続きました。1880年時間を定義する議案が国会を通過して、ようやくグリニッジタイムが標準時間と公式に認められました。

今ではクォーツ時計が数百円で手に入り、ネット上で世界中の時間が瞬時にわかってしまいいます。「時間」という人類最高の発明品に乾杯。

参考にしました

時間の歴史―近代の時間秩序の誕生
ゲルハルト・ドールン‐ファン・ロッスム

大月書店
1999-09
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リンク

Http://greenwich2000.com/
グリニッジ天文台の公式ホームページ。上の文のネタ元です。歴史がよくわかります。

Http://www.britannica.com/clock
ブリタニカの時計の歴史。いろんな時計が図入りで紹介されてます。

Http://physics.nist.gov/GenInt/
これも時計の歴史。

Http://www.fh-tokyo.com/
スイス時計協会のホームページ。日本語。ここでユグノーとの関連を知りました。

Http://www.worldtimeserver.com/
世界の時間を瞬時に調べられます。「お気に入り」に一つあってもいいでしょう。

Http://www.calendarhome.com/tyc/
世界の暦。暦間の変換をしてくれます。