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アヘンにまみれた大英帝国 世界史小ネタ第42回

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アヘンというと、うつろな表情でキセルをくゆらせている中国人を連想しますね。実際19世紀末の中国人男性の4分の1がアヘンの犠牲者だったとか。でも、加害者イギリス人もまたアヘンまみれだったことをご存じでしたか。

「唇のねじれた男」(「シャーロック=ホームズの冒険」)のなかで、ワトスンがホームズとばったりであった場所は「アヘン窟」。事実イーストエンドと呼ばれたロンドンのスラム街ではたくさんの「アヘン窟」が軒を連ねていました。

コナン=ドイルだけでなく、ディケンズやオスカー=ワイルドも当時の中毒者を鋭く描写しています。フランス人ですが、エドガー=アラン=ポーやボードレールは自身がよく知られた中毒患者でした。ルイス=キャロルの「不思議の国のアリス」は中毒者の「幻覚」そのものではないか、といわれているくらいです。

19世紀のイギリスでは、アヘンはアルコールほど警戒されていませんでした。アルコールは人を攻撃的で暴力的にするが、アヘンは逆に人をおとなしくさせると信じられていたからです。ベビーシッターや育児に疲れた母親にとって、子供を従順にしてくれる幼児用のアヘン剤は必需品。薬局のカウンターで簡単に手に入ったため、当時の労働者階級の6分の5は、何らかの形でアヘンを利用していたとか。もちろんアヘンの危険性を指摘する声もありましたが、それを判断する化学者や内科医の多くもまた常用者でした。イギリスのアヘン輸入は1830年の91,000ポンドから1860年の280,000ポンドまではねあがりました。

特殊なケシの花の効用は古くから知られていました。Opinm(アヘン)の語源は古代ギリシャ語。ギリシャ人はエジプト人から、エジプト人はシュメール人からその利用法を学んだといいます。

18世紀末、アヘンは戦略的貿易品となりました。もともと「Take your opium」という挨拶があったぐらい、インドではケシの栽培が盛んでしたが、プラッシーの戦い以降、ガンジス下流域のアヘンの生産と流通はイギリスが独占します。インド農民から安く買いたたいたアヘンを茶輸入の代価として広東で大々的に密売。この麻薬ビジネスが、中国人の心身の破壊と引き替えに、本国に莫大な富をもたらしたことは周知の通りです。

20世紀に入って、ようやくアヘンは全面禁止されましたが、しかし、この魅惑的な植物はけっして地球上から姿を消したわけではありません。最近の報道によれば、バーミヤンの仏像遺跡を破壊している「タリバン」(アフガニスタンのイスラム原理主義集団)の資金源はアヘンだとか。南北間の経済格差が無くならない限り、アヘンの闇ルートは根絶されないようですね。

参考にしました

アヘン
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アヘン窟の男
コナン・ドイル

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リンク

http://www.opioids.com/opium/
アヘンの詳しい歴史。ネタ元です。

http://drugs.uta.edu/drugs.html
ヴィクトリア朝時代のアヘンについて詳しい。

http://www.pbs.org/wgbh/pages/frontl
現在のアヘン貿易に詳しいPBSのページ。

http://www.bakerstreet221b.de/canon/i
ホームズの全シリーズが原文で読めるサイト。